ここ最近のスケーターの懸念事項といえば、ギア類の価格急騰ではないでしょうか。コロナウイルスの蔓延と共に、各種ギアを製造する工場は軒並みストップ。その一方で三密を避けひとりでも楽しめるものとして、またオリンピック競技として採用されたことも後押しとなりスケートボードの需要が大幅増。各地のスケートショップではほとんどのギアが売れ、品薄という珍事に。ショップ関係者やスケーターは苦笑いするしかありませんでした。やがてコロナも終息に向かい、ギアの供給も追いついていくのですが、コロナ禍で受けたさまざまな歪みは原材料や輸送にかかるコスト上昇の要因となりました。また国内においては年始より円安の傾向が続き、ギアのほとんどを輸入に頼っているという現状、業界からは悲痛な声が鳴り止みません。一時は1ドル=150円に到達という異常な状況は「円安? 円高? 難しいことはよくわかりましぇーん」という人も、この危機を否が応でも感じざるを得ないでしょう。
ほんのひと昔と比べてデッキ1本の価格は1500〜2000円ほど、足回りのギアも1000〜1500円ほど高くなったという感覚でしょうか。円安は今後も続き、「500円まで下がる」と言うYouTubeチャンネルまであるわけです。さすがにそれは極端すぎると思うのですが、じわじわ上がっていくギアの価格にガクブルする他ないのが悲しき現状。逆に言えば、今の僕らはふるいにかけられている時なのかとも思うのです。1度手を出してしまったスケートボードにそこまで熱狂できなかった者にとってはフェードアウトするもってこいの理由となり得ます。逆にスケートボードの罠にまんまとハマった中毒者は、生活を犠牲にしても続けてしまうって話。
消耗品であるギアの価格に焦点を当ててみましたが、アパレル価格の上昇も然り。「当時は海外一流スケートブランドのTeeやキャップなんか、4000円しないぐらいだったのにね…」なんて昔話に今のティーンは目を丸くしたりするのです。需要と供給で価格が決まるというセオリーが正しく反映されているのであれば、「スケートブランドも価値が上がった」「付加価値がつけられるようになった」という結果ともいえます。「いやーでもやっぱり高ぇぇ(泣)」
余談ですが、昨年2000年頃のものだと思われるAWSのキャップを買ってしまいました。今見るとイナたいボディのそれは、価格も当時のままで4000円しないくらい。キックやコンケーブが強く上手く乗りこなせなかったがために当時は毛嫌いしていたAWS。スケート歴を重ねる中で、数多くのスケーターを熱狂させ、絶大な支持を受ける素晴らしいブランドであったと理解している今では、そのイナたいキャップも大事に保管していこうと思っている次第です。
─Kazuaki Tamaki(きなこ棒選手)