スケートボードという共通言語があるおかげで、我々は大なり小なり恩恵を受けることがあります。特に旅先なんかじゃ突然の「初めまして」にもかかわらず歓迎してくれ、泊まる場所を用意してくれたり、観光ブックに載っていない地元の名店に連れてってくれたりと、「まぁ普通の旅行やビジネスではまず得られることのないよね」ってなグッドラックに遭遇することがあるのです。
かれこれ6年前の出来事なのですが、仲間と向かったカリフォルニアでは数多くの幸運に恵まれました。サンフランシスコから橋を渡ったお隣、ゲトー臭がぷんぷん漂うオークランドでのお話。そこに10日間ぐらい滞在していたのですが、見るからに金のない僕ら日本人スケーター3人に施しを与えてくれたのが現地のスケーターでした。僕らが迎え入れられたのはオークランドを拠点とするOurlifeクルーがふたりでシェアする一軒家。かたやフィルマー、かたや中学校で教鞭を執りつつタイルアートを創作するアーティストというスケートハウスに運良く辿り着いたのであります。
僕は当分海外に行けそうにないので昔の出来事を思い起こしていたのですが、せっかくなのでそのタイルアートについて書いて…いやキーボードを叩いてみようかと思います。そのタイルアーティストの名前はサンティアゴ・メネンデス。AntiheroやOurlife、Makalassiといったスケートブランドにアートワークを提供していたり、DIYパークのコンクリートにもそのアートを施しているので何かしらの形で目にしている人も多いことでしょう。「サンティ」と呼ばれる彼の出身はメキシコとのことですが、スケートをしにアメリカに渡ってきたそうです。10代の頃はAntiheroへの加入を目指してスポンサーミービデオなんかも作っていたとのことですが、その夢は叶いませんでした(それでも十分なスキルの持ち主)。やがてタイルアーティストとして活動を始めるのですが、「ライダーになることはできなかったけど、今こうやって彼らにアートワークを提供したり、仲間として活動できているのはとてもうれしいことだ」と言っていたのが印象的でした。
自分の思い描く立ち位置、チャンスを掴むためのハードルはいつの時代も高いもの。そんな中でどのように立ち回っていくか。信念を持ち何かにトライし続けていると、思わぬ方向からチャンスが巡ってくるかもしれないということ。それを目の当たりにできたことは、6年前に行ったオークランドでゲットした最もいい経験だったんじゃないかと思っているわけです。
─Kazuaki Tamaki(きなこ棒選手)