スケートボードはつねに進化し、止まることがありません。願わくばこの先も進化を続け、僕らが死んだ後も100年、200年…と、板にタイヤが取り付けられたシンプルな乗り物のまま受け継がれていってほしいものです。そしてそんな未来があるのなら、間違いなく見てみたいって思うのです。そこでは今の僕らが目を疑うようなトリック、何をやっているのか理解できないトリックが標準装備され、ギアだって恐ろしくスペックの高いものになっているはず。たかだか20年選手の自分ですら、スケートを始めた当初と比べるとかなり進化しています。いまから数十年後、数百年後なんて得体の知れないものになっているのは想像に難くありません。
それと同時に思うのは、この遊びも人間が身体を張ってやっている以上、限界というものもあるはずということ。どう考えても100段のステアを飛べる身体を人間は持ち合わせてはいないし、バーチカルで3600°のエアーを繰り出すことなんて考えられません。同様にフラットのオーリーで高さ2mを飛ぶってのも無理だろうし、フリップ回転やスピンにも人間のなせる限界というものがあるはずです。
2年前の年末にアップされたナイジャ・ヒューストンのパートなんか、「もうこれ以上の動きできる人間て出てこないんじゃねーの!?」ってのを観た気がします。おそらく毎日のようにあんなクリップを撮影しているのだから身体のバケモノ。またそれに続くスケーターの姿も少なからずいるわけです。
そんな「デカい、高い、速い」などといったタテの限界挑戦へのアンチテーゼじゃないけど、業界も限界を見越した感じでヨコへ広がりも拡大しつつあるように思えるこの頃です。具体的には、最近6インチのマイクロボードで撮影したビデオが話題になったSK8MAFIA、逆に14インチ超の極太ボードがリリースされているHeroin。Spitfireのウィールだって43mmや66mmみたいな極端なサイズが商品化されています。新しいものでもありませんがZaroshが手掛け、イベントも開催しているダートウィールなんかもいい例かと。なんといっても乗りやすさは皆無、スケートボードの進化にはまるで寄与することもなさそうなギアがちょこちょこ発表されてます。進化じゃなくて深化、さまざまな角度からスケートボードを楽しむ方向へとシフトしていっているようにも思えるわけです。そしてそれは、タテの限界に近づくための挑戦をとっくに放棄した僕のようなスケーターにとっては、面白くも、ありがたかったりもするのです(笑)。「こんな楽しみ方があったか!」と。
タテとヨコ。まぁ何でもいいのですが、追求することだけは終わってほしくなくて、それでこの先の何代後の人もスケートボードを楽しんでいる世の中であるといいなと思うのであります。
—Kazuaki Tamaki(きなこ棒選手)