ここ1ヵ月ほど神奈川の茅ヶ崎市や藤沢市といった湘南エリアに滞在中。このエリア、特に海沿いの地域に来ていつも思うのはサーフカルチャーが根強いということ。サーフショップがいくつも点在し、またそれ以外でもサーフなテイストを纏ったお店が実に多いこと。海岸付近の街にはビーチクルーザーにサーフボードを乗せて移動している人やウェットスーツ姿で歩いている人、上裸にボードを担いで歩いている人の姿もなんら珍しくはありません。ちょっと良さそうなマンションには共用の自転車置場ならぬサーフボード置場があったりもする。海を眺めていると、長く続く海岸沿いには数百はおろか数千ともいそうなサーファーたちが波に乗っていたり、次の波を待ったりしている。何も週末に限った話ではなく、ド平日の朝っぱら、真昼間からこの様子なのであります。彼らはいい波を求めて日も登っていない早朝から海に行き、波に乗ってから仕事に出かけたりというライフスタイルだそう。一度もサーフィンをしようと思ったことがない自分でありますが、このストイックさは多くのスケーターに欠如しているものではないでしょうか(笑)。
このエリアにいるとサーファーたちが街の主人公であるように思えてきます。サーフィンのメッカとして知られるエリアだけに当然ちゃ当然なのかもしれません。行ったことはありませんが、日本の各地にあるサーフィンで有名な地域はどこもきっとこのような感じなのでしょう。その視点で考えると、日本の都市圏、また深いスケートシーンを持つ地方も数あれど、そんなレベルまで街にスケートが浸透しているのっては聞いたことがありません。サーフやスノーとは違い、基本的にはイマジネーションひとつで年中どこでも滑れるからこそ、スケーターが住む家ってのはどこでもいいのかもしれませんが、スケートボードのメッカとして知られるあの街この街も、あくまでスケートコミュニティでのみ語られているに過ぎず、一般市民にとってはあまり馴染みのない話に違いありません。たとえば南青山や麻布、白金といえばセレブな街、秋葉原といえばヲタクの街、新橋といえばサラリーマンの街、自分が最近まで住んでいた高円寺といえば古着やバンドマンの街(近年はお笑いも)…というように「スケーターの街」が出来上がっていく未来を自分は見てみたい。
全国各地にスケートパーク建設が進みますが、そんな僕の空想の未来はまだまだ遠いだろうか。その点、欧米諸国はやはり日本の何歩も先を行っているわけで、人の集まる駅前広場のようなところにスケート用の建造物が設置されていたり、街のあちらこちらをスケーターが削っていく前提で街づくりが進められていくという例もあるそうです。別に街じゃなくてもいいや、町でも村でもいいんだけど、スケーターがちょっとした主人公になれるような、スケートボードが完全に溶け込んだ、そんなエリアがここ日本にも生まれてくることを願ってやみません。もっともその時には自分らはとっくにジイジバアバになっていて、4つのウィールでそこらを流す若者をウィールチェア(車椅子)で見守るだけかもしれないけどね…。
─Kazuaki Tamaki(きなこ棒選手)