スケーターへの締め付けがやたら厳しいと話題の渋谷の街中に、スケートパークが帰ってきました。東京オリンピックに向けた街の再開発で宮下公園が取り壊され、3年以上経っての再オープン。歓喜するスケーターがリニューアルしたパークを流す姿がSNSでは毎日のように流れてきます。旧宮下公園のパークに毎日のように通い、仲間とのセッションを楽しんでいた僕。そのクローズ後といえば「また屋上にできるらしーよ」というぼんやりとした情報があるだけで、パーク建設の現場では何が行われているのかわかっていない状態でした。
若者の多い街、道を歩けばここかしこにスケーターがいるわけで、やれチルスケや撮影で街中のスケートに悩まされる商店街組合からはパークの再建設に反対の声も大きかったようです。反対派の人たちとも話し合いを重ね、パークリニューアルに向けて陰ながら活動を続けていたのがT19の故・大瀧 浩。いざパーク再建設も決まったところで他界されてしまったのですが、その遺志や活動を引き継ぐべく有志が集結し、再オープンするに至りました。話を伺ったところ少なからずの苦労もあったとのこと。建設を共にする相手はスケートに関して無知の行政やデベロッパーなので、スケーター側の意見も伝言ゲームを繰り返すうちにまったく別の設計に変わっていたり、防犯上の観点からセクションの形状が制約を受けた部分もあるようです。それでも少々無理を言ってボウルセクションを深くしてもらったり、逆に本来予定していたストリートエリアは省かざるを得なくなったという経緯もあるのだそう。現場に携わる者以外には知り得ないさまざまな規制や苦労は他にもたくさんあったに違いありません。
完成したからには最低限滑った感触だけでも掴んでおこうと足を踏み入れたところ、そこには最高なスケート空間が広がっていました。決してラクショーには滑らせてくれないセクションが次々と課題や宿題を突きつけ、初心に帰ったような気にすらさせてくれます。ギャラリーからの黄色い声援にいいとこ見せてやろうとついつい頑張っちゃう。トランジションのパーク…そう聞いて尻込みするスケーターもよく見かけるのですが、この手のパークはどこでも最初は滑れないのが当然。先日もずいぶん名の知れたスケーターらが苦戦しているのを見てビックリ。せっかく渋谷の一等地に素晴らしいパークがあるのだから、多くのスケーターがその恩恵を受け、滑り倒してほしいと思うのです。2時間1000円という「都心価格」も当初の要望から大きく跳ね上がってしまったようですが、それだけの価値は見出せるんじゃないかなと。そんなこんなで僕はこの1週間で5回も…財布は寂しくなること間違いなしですが、リニューアルした宮下パークからまた新たなシーンを眺められるような気がしてワクワクが止まりません。
─Kazuaki Tamaki(きなこ棒選手)