例のオリンピックでは日本勢の大活躍もあり、これまでのように「スケートボード=迷惑な遊び」という取りあげられ方から一転、注目度の高いものとして世間を賑わせております。そこらをプッシュしていても白い目で見られることも減り、なんなら邪険に扱われるどころか興味本位に話しかけてくる人も増えたような気がしています。各地のスケーターから同じような声が聞こえてくることを踏まえるとやはり僕の勝手な思い込みではなく、スケートボードがまたひとつ社会に許容され始めた新しい時代の到来だと言っても過言ではありません。オリンピック後の着地としてはかなりいいメイクをしているんじゃないのでしょうか。
スケートボードがオリンピック種目に取り入れられ、スケートボードやスケーターの存在が取り沙汰されるようになるだろうことは前々から言われていたことです。しかしいざ終わってみるとこの盛り上がり方は正直、余裕で想定超え。トップスケーターのみならず、シーンを取り巻く業界のあんな人こんな人が各種媒体に登場し、またお茶の間では芸能人が板を引っ張り出してきたりというのを連日見聞きするようになりました。
裏を返せば、「今話題のスケートボード関連のネタでいけば数字が取れる!」ということになるのでしょう。という訳で周知の通り、何から何までスケートボード(スケーター)が起用され、首を傾げざるを得ないものもまた多し。SNS上ではまるで得体の知れない新規スケートブランド(?)の広告が頻繁に流れてきます。スケートとは無縁のはずの企業・ブランドも広告のみならず、イベントを企んではさも「スケートボードを応援しています!」と言わんばかりのPRっぷりでございます。「これも時代なのか…」と思うこともあるのですが、なんだか節操がないというか、異質であり身体が拒絶反応を示しております。
果たしてそれらに踊らされてみたところで、長い目で見てスケーターが恩恵を受けるとは考えられません。シーンに本当の意味で還元してくれるのは「広告費」を投じて利益をテイクしていくコーポレートではなく、根本にスケートボードがある(社会的に見て)小さなブランドや企業に他なりません。新しいモノや情報、価値を生み出し、その対価から得た収益を元手にライダーや地域のスケートをサポートする。至ってシンプルなことを続けているところなのであります。大企業の協賛なくしてデカいコンテストは開催し得ないし、コーポレートや怪しいブランドの放つモノを「買うな!」と言うつもりはありません。ですがスケートシーンが健全に続いてくために今一度、「どこで何をどう消費するか」について考えてみてほしいと思うのであります。
もしそんなバランスも崩れ、いよいよ本当に「なんでもござれ」が進行していくとどうなるのか。スケートボードは僕の嫌いな言葉、「横乗りスポーツ」の代表格にしかなり得ません。絶対嫌でしょ、そんなの(笑)。
─Kazuaki Tamaki(きなこ棒選手)